ヤクルト本社(証券コード:2267)の株価は、2024年以降じわじわと下落し、一時期の「ヤクルト1000」シリーズの大ヒットによる上昇は半値以下にまで戻ってしまいました。2025年は業績の下方修正やアクティビスト株主との対立もあり、投資家の厳しい視線が注がれています。なぜ、ここまで株価が低迷したのか、その背景と今後の展望を詳しく解説します。
1. 「ヤクルト1000」特需の終息による販売鈍化
「ヤクルト1000」は2021年の全国発売以来、睡眠の質向上やストレス緩和効果で社会現象的なヒットとなりました。2022〜2023年にかけて株価を大きく押し上げた原動力でしたが、2024年からは勢いが鈍化しています。特に2024年度の販売計画は、
- 宅配品:前年度比6%増の1日あたり230万本 → 実績196万本
 - 店頭品:同27%増の130万本 → 実績105万本
 
にとどまり、未達に終わりました。富士小山の新工場が2024年1月からフル稼働を始めたものの、ブーム終息で生産過剰状態となり、「空回り」の印象が強まっています。
2. 海外市場、特に中国での販売減と収益悪化
ヤクルトの売上の約6割は海外市場によるもので、最大の成長市場だった中国での販売量が2025年の第2四半期に前年同期比で20%以上減少しました。この減少には、
- 経済の先行き不透明から消費者の購買意欲低下
 - 現地企業との競争激化による市場シェア低下
 - 販売チャネル整備の遅れ(宅配販売が少なく、コンビニやオンライン強化が追いつかず)
 - 円高による利益圧迫と値上げ難航
 
といった複合的な要因があります。
3. 物流コスト増加と為替逆風による利益圧迫
乳酸菌飲料は鮮度・温度管理が必要なため物流コストが高い商品ですが、世界的な物流費高騰が収益を圧迫しています。さらに2025年は円高傾向が強まり、海外売上の円換算利益が目減りしました。このため2026年3月期の業績予想は、
| 項目 | 2025年度予想 | 2024年度実績 | 増減率 | 
|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,950億円 | 5,060億円 | -0.9% | 
| 営業利益 | 535億円 | 585億円 | -8.5% | 
| 純利益 | 455億円 | 490億円 | -7.1% | 
| 営業利益率 | 9.4% | 13.1% | -3.7ポイント | 
と減少予想に修正されました。
4. 株主総会での自己株買い提案否決と経営方針
2025年6月の株主総会では、米国の投資ファンドが1000億円規模の自己株買いを提案しましたが、ヤクルト経営陣は「成長投資優先」の方針でこれを拒否。短期的な株主還元よりも中国、インド、米国での新規事業や研究開発に経営資源を振り向ける姿勢を示しました。このため株主からは一時的に失望売りが出ましたが、将来的な成長を見据えた経営判断と評価する声もあります。
以上のポイントから、ヤクルトの株価下落は「1000」シリーズ一過性の特需の反動、海外市場の苦戦、コスト高騰と為替逆風、株主との対立など複数の逆風が重なった結果と言えます。今後は海外展開強化や新商品開発に注力し成長軌道復帰を目指す姿勢が鍵となるでしょう。
ヤクルトの業績推移と2026年3月期予想の比較表もご紹介します。
| 年度 | 売上高(億円) | 営業利益(億円) | 営業利益率 | 純利益(億円) | 
|---|---|---|---|---|
| 2023年3月期 | 4900 | 600 | 12.2% | 480 | 
| 2024年3月期 | 5060 | 585 | 11.6% | 490 | 
| 2025年3月期(予想) | 4950 | 535 | 10.8% | 455 | 

  
  
  
  
コメント